縄文人は太平洋を渡ったか?

縄文人は太平洋を渡ったか―カヤック3000マイル航海記

縄文人は太平洋を渡ったか―カヤック3000マイル航海記

カヤック欲しい病、継続中。前から欲しいと思っていた本で、見るからに重厚な一冊なのですが、ジュンク堂の本棚に表紙を向けて置いてあって、思わず手が伸びた。喫茶店でもたぶんスティーブ・ジョブスの本を読んでると勘違いされていたに違いない。ごめんなさい、全然中身違いますから。。
アメリカの西海岸の川岸で見つかった「ケネウィック人」の化石が、どうやら縄文人縄文時代の日本人)のものではないかという学説が発表されるや、カヤック乗りである著者のジョン・タークは、孫もいるいい年した「おじいちゃん」でありながら、その話を聞くと、もういてもたってもいられなくなり、「本当に縄文人は日本からアメリカまで行ったのか?」を自ら実証するために、根室からはるか3000マイル(つまり5000km)離れたアラスカ・セントローレンス島まで、帆付き船とカヤックを駆使して辿りつくというお話(1999〜2000年)
旅は、根室から千島列島を経由してカムチャッカのペトロパブロフスク(・カムチャツスキー)に至る前半(1999年夏)と、そこから北東シベリアを経由してベーリング海峡を渡る後半(2000年夏)に分かれる。前半は離島間に流れる激しい潮流に翻弄されながら突き進む旅の記述(マゾ過ぎる…)がメインで、後半はどちらかというと、海の豊かな生物と、カムチャッカ・北東シベリアに住む人たちの民俗描写に重きが置かれている。
ロシア旅行に必須となるロシア人ガイドとおびただしい量の許可書に悩まされながら、無人島で水を探すのに1日掛けたり、投網でサケを捕まえて晩飯にしたり、シャチの群れに一撃にされるかもしれないなどとおびえながら進んだりとか、記述があり得なすぎる。ソ連崩壊から10年足らずで経済大混乱の中、ろくに人も住んでいない北東シベリアで、たまに集落が出て来ても店には食べ物すらろくにおいてなかったり。そんな状況下にあっても、「縄文人がなぜここまで来る必要があったのか」に思考を巡らせる著者。相当な知識と経験と情熱が揃わないとここまではいかないだろね。圧巻。
近年のトナカイやセイウチの激減の理由、アイヌイオマンテ儀式の存在意義、現役稼働する真空管の通信機、信じられないくらい分厚いスモークサーモン、モンゴルのゲルに似た円形のテントでの正しい振舞い方など、色々な観察結果がどっさりで、環境調査・民俗調査資料としても相当価値高そうな感じ。でも自分のような素人ではちょっと判断付かない。訳者コメントでは「ヘイエルダールのコンティキ号探検記のように長く読み継がれていくかも」とのこと。
著者あとがきで「読み終えたら是非Webページもみてね」と書いてあったので見てみたら、この旅の後またカムチャッカの付け根の村・ヴヴェンカを訪れていて、その顛末が本になっているみたい。カムチャッカに同行した奥さんのクリスさんは2005年雪崩事故で亡くなったらしいが当の本人は未だパワフルで、アルタイ山脈MTB旅とかエルズミア島一周とか、依然としてかなり激しい64歳。
著者Webページ:
http://www.jonturk.net/
2010年の新刊。日本語訳でないのかな。。
The Raven's Gift: A Scientist, a Shaman, and Their Remarkable Journey Through the Siberian Wilderness

The Raven's Gift: A Scientist, a Shaman, and Their Remarkable Journey Through the Siberian Wilderness

◆ 追記 : 2012/04/14
先頃4/1からジョン・タークの逆コースを、日本人の山田龍太さんがカヤックで挑戦する旨の報道がありました。
http://www.saitama-np.co.jp/news03/30/08.html

アメリカ・ケネウィック市を起点とし、ユーコン川下りを含めて東京湾まで帰ってくる4年にわたる壮大なものです。是非貫徹していただきたいです!
http://www.ryotayamada.com/